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よもやま話

何歳まで生きたい?

仲間との雑談で「何歳まで生きたいか?」と問うと「俺、70歳で良いかな」、「せめて80歳までは生きたいかな」と控えめな応えが返ってきた。
昨年の2月の末に母は小腸・大腸閉塞で胃瘻が使えなくなりIVH(中心静脈栄養法)となった。
※最近ではIVHと云わずにTPNと云うようになった。

IVHの最大のリスクは感染症になり易いことだ。その為にせいぜい半年の延命と考えていた。
意識は正常だが、寝ていることが多くなり、見舞いに行っても寝姿を見て帰るだけのことも有った。
声も出しずらく、体を動かすことも出来ず、TVやラジオも見聞きせずに、ただ生かされている状態が母の為に良いことなのかを考えるだけの見舞いなっていた。
運良く、起きている時でも私たちの一方的な話を聞いているだけで、ほぼ会話は成り立たないのだ。

これでは、医療の力で延命されているだけで、本人に取っては意味の有ることなのだろうか?

私も家内も龍さんとは会話できないが、娘だけが出来るのだが、なんと、「お婆ちゃん、もっと生きたいって云っている」と云うのだ。

老人ホームに入った頃に「長生きしすぎた」と口では云っていたが、本心とは裏腹な言葉だったと知った。

今年6月に老人ホームに入所中の母の姉(私にとっては叔母)が急性心筋梗塞で緊急搬送された。
不思議なことに、血栓溶解剤もステントの使用もなく自然溶解して退院出来た。
コロナの時期と重なり、面会も禁止されていたが、退院時の手続きの時に会えてプリンを1個食べさせることが出来た。

いつもなら「食べさせてやろうか?」と云うと「自分で食べられるよ」と云うのが云わずに口を開けるだけだった。
「久しぶりのプリンだ。美味しい」

しかし、老人ホームに戻っても食は少なく、エンシュアとアミノ酸飲料と水ようかんで生きていた。
これでは脱水が起きるだろうと案じていたが、案の定7月に入って脱水と心不全で入院となった。

昨日、病院からの呼出で医師面談をしてきた。
担当医は「血管が硬く針をさせる場所が無くなった。このまま看取るかIVHの2択しかない無い」と云う。

胃瘻という選択肢も考えたが、92歳と云う年齢は60代の3倍のリスクも有り、入所中の老人ホームは入所時には胃瘻もOKと云っていたのだが、胃瘻患者が増えすぎてマンパワー不足で対応できない状況だと知らされた。

若い方で一過性の食事困難な場合はIVHで復活することが多いと聞くが、90代で復活の可能性が有るかどうかを医師に聞いた。
「食べることが大好きだった方なら、可能性は1%は有ります」

叔母は食べ物の好き嫌いは有るようだが、食べることが大好きな人では無かったように思う。
母はその真逆で食べるのが大好きな人だったが、胃瘻でも復活出来なかった。
叔母の場合は可能性は限りなくゼロに近いだろうと思われる。

日経メデイカルに「Too young to die」の記事が有った。
ホスピス勤務の医師が書いた記事だったが、98歳の老婆でも「死にたくない」が本音だとか・・

認知症が進行していた叔母だが、あまりにも立派な事を云うので長いこと気付かなかった。
だが、介護認定作業の時に、認定院さんが開いた口が塞がらないような大ボケ発言の連続だったし、老人ホームに面会に行くと
「なんだ、来るのが分かっていたらお菓子での買って来たのに」
「何処で買うの?」
「エレベーターで地下に行くと食品外だから、そこで売ってるよ」
ついに駅ビルに住んでしまったのか?

本人は覚えていないだろうが、15年前の肺炎から2回の無熱肺炎で私の機転で命を救ったし、家内と娘の機転で低栄養を救ったことが有る。
2度目の肺炎は入所していた特養のケアマネからの連絡で「提携病院の医師は胆嚢炎を疑っている」と言っていたが、症状から肺炎を疑い、直ぐに救急搬送を依頼して運ばれた病院に駆けつけた。
CTを見たときに「これはヤバイ」と思ったが、どうにか回復出来た。
しかし、入院が長引き、それ以来は車椅子になってしまったが、あと1日遅れていたら助からなかっただろう。

不老不死は妖怪以外にはあり得ないだろうから、ヒトには必ず死が訪れる。
叔母が安らかな死を迎えられるようにしてあげたいと思うが、老人ホームの退去やら転院の手はず等で我々は暫くは忙しい日々になろう。

生涯独身で子供も居らず、一番近い近親者が私たちと私の弟だけになる。
甥と叔母の関係を証明するのに、私の戸籍謄本と母の戸籍やら手続きするのに必要な書類が多く必要なのだ。

おそらく半年程度かそれ以下の延命に過ぎないだろうが、その為に忙しくなるのだが、一番は叔母が生きたいと思っているかどうかだ。
「ヒトは幾つになっても生きたいと思うものだ」が絶対に正しいとは言えないが、そう思うと信じて行動するしかない。

2020年7月18日

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