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癌の情報

診断してはいけない

三角巾私たち薬屋は診断してはいけないことになっている。医師法で診断できるのは医師と歯科医師だけだからだ。
たしかに診断は難しいし間違えたら訴訟になってしまうが、確定診断は無理としても大まかな診断が出来ないのでは薬を出すことは出来ないという矛盾が常に付き纏う。

昔、足立区でドラッグストアーをやっている頃だ(今でも屋号はドラッグだが(笑))三角巾をして来店された常連客がいた。
この方は戦争でインドネシアに行っていたことがあり、それでインドネシア語が話せると言っていた。
「インドネシア語が話せるタクシードライバーなんて凄いね。」でも、インドネシアの人が彼のタクシーに乗ることが有るのだろうか?
その姿を見て「どうしたの?階段から滑り落ちたの?」と冗談を言える間柄だ。
「いや、階段も滑ってないし、転んでもいない。突然に痛くなった。痛み止めが欲しい」
「ずいぶん大げさに三角巾してるけど、具体的に何処が痛むの?」
「腕の全部が痛く感じる・・」
「少し、触っても平気かな?」と聞くと承諾が得られたので、三角巾から出ている手首の上を軽く触れてみると痛みで彼の顔が歪んだ。
「ゴメン、ゴメン、これくらいでも凄く痛いみたいだね」
それから少しだけ彼と話をしたが、その部分は覚えていない。たぶん、経過を聞いたのだと思う。
そして、「うちの薬では痛みを止めることは無理だから大きな病院に行った方が良い」と受診勧奨して帰させた。
すると従業員から「どうして痛み止めを出して遣らないんですか?」とか「痛いって来てるんだから何か出して遣ったら良かったのに」とブーイングの嵐。

あら、カウンターから少し離れたところで話していたのに皆は聞き耳立てて居たようだ。
「話は聞いていたようだね。それで痛みの原因が想像できたかな?」
みんなポカンとしている。
「彼の痛みを止のことが出来るのはモルヒネだけ。当然うちには無いから病院に行かせた」
モルヒネと言う言葉に更に言葉を失ったようで何も言葉が出てこない。
少し間をおいてから店長が怖ず怖ずと聞いてきた。
「社長はなんだと思ったんですか?」
「たぶん骨肉腫だと思う」
皆の頭の中で「骨」 「肉」 「腫」の文字が飛び回っていたのだだろう、誰も何も云わなくなった。

2ヶ月後に彼の奥さんが来店された。
「お宅に伺って帰る途中に転んで救急車で運ばれました。左腕全部が複雑骨折でした。」
「病名は骨肉腫でしたか?」
「はい、あっという間に進行して・・・・」

癌の疼痛にモルヒネ単独で効くのは60%。他の鎮痛剤やステロイドと組み合わせても骨肉腫の痛みはどれだけ止まるかは疑問がある。

私はお客さんに病名を告げていないから診断したことにはならない。
しかし、病名を診断できないと薬も出せないし受診勧奨も出来ないのは事実だと思う。

なぜ骨肉腫だと分かったかって?
まぐれ当たりだろう(笑)

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