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テロメラーゼ

DNA老眼に飛蚊症の目では本一冊を読み終えるまでは時間が掛かるようになった。
今、読んでいる藤原大美氏の本の中に「テロメラーゼ」の解説が有り、その単語を懐かしく感じたので、私なりの解説をしたい。
先ず、「テロメラーゼ」とは何ぞや?からだろう。
細胞に普通は1つしか無い「核」、その中にDNAが存在する。
テレビで宣伝しているDMM.comとは関係ない。
DNAの末端に「テロメア」と呼ばれる分裂の回数券もどきのものが存在するが、細胞分裂が起きる際にそれが少しずつ減り、およそ60回で分裂を停止する。
細胞分裂が出来なくなると云うことは、壊れた細胞が新しくなることが出来ないと云うことだから、それは生命体にとっては死を意味する。

DNAの遺伝子情報は例えれば料理辞典のようなマニュアル本で、細胞ごとに開くページが決められていて、余計なものは見えないように折りたたまれている。
インスリン産生細胞はインスリンの作り方さえ分かれば良いし、それぞれの細胞ごとに仕事分担以外の事はしなくて良い仕組みになっている。
しかし、分裂回数に制限が掛かっていると困る細胞が存在する。それがヒトでは骨髄幹細胞と生殖細胞だけだ。
骨髄幹細胞は血液を作るのに必要な細胞であるから60回では足りない。同じく生殖細胞も60回では子孫を残す可能性は極めて低くなってしまう。
それで、辞典の中に「テロメラーゼ」と呼ばれるRNA転写酵素の作り方が書いてあり、読めるのは骨髄幹細胞と生殖細胞だけになっている。

癌細胞の多くは、この禁断のページを開きテロメラーゼを作り出すことで永遠に分裂を停止せずに済むわけだ。
このテロメラーゼが人為的に作られれば不老不死も夢では無い・・・・・と誰しも考えるだろう。

だが、どうやって核の中にテロメラーゼを入れることが出来るかが難問だ。
テロメラーゼは6塩基の小さなものだからウイルスベクターに入れて感染させると云う方法も考えられるが、全身の細胞全てに感染するウイルスはたぶん存在しない。
注射で投与しても核の中に取り込まれる保証は無い。
かくして、テロメラーゼでの若返りも不老不死も夢物語で終わってしまうのだろう。

もし、仮にテロメラーゼの合成が安価になり、それを核に移行させる手段が出来て不老不死の人が溢れたらどうなるだろうか?
たぶん、少子化の歯止めは利かず世界中が中年と老人ばかりで食料の生産が追いつかずに餓死することになるやもしれぬ。
人は適当な時に死ぬことでバランスを取っているのかもしれない。
科学の進歩は必ずしも幸福になるとは限らないものだろう。

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