トップドラッグ

免疫専門のクスリ屋


免疫専門のクスリ屋

癌の情報

或る再発乳癌の人

カツラもう11年も前のことなのに少し前のように思い出す事がある。

彼女は再発の乳癌で骨転移と肝転移があった。
アジュバントで受けた抗癌剤の影響なのか、現在使用中のゼローダの影響なのか単球の変化が著しい。
単球はマクロファージや樹状細胞に変わるものだから、少なくても多くても良くない。
5~7%ぐらいが一番良い。
彼女の単球もその数値になっていると腫瘍マーカーが下がるのだが、数値が下がると悪化するの連続だった。

初めて出会ったのが2002年の10月、それから2年半の2005年4月に横浜中華街で待ち合わせをした。
少し遅れて来た彼女はなんとロングの茶髪だった。
不思議そうに見ていた私に「これ借りたカツラ。全部抜け落ちちゃったから」
記憶は時間が経つと曖昧になるものだ。ナベルビンの話をしていた記憶があったのでナベルビンで脱毛したと思い込んでいたが、昨夜ふと疑問が生じた。ナベルビンでは脱毛は無いはずなのに・・・

資料を見てみたらタキソテール6回の使用後だった。
アドリアほどでは無いがタキサン系も脱毛が激しいので納得する。

中華街で食事をして喫茶店で資料を広げていた。
デートでは無く患者指導の一環だ。
その時、採血結果を見て私は怒っていた。
「骨髄機能がボロボロだ。どうしてここまで遣るんだ」
それに対して彼女は「エコーで肝臓の腫瘍が壊れていたのを見て全部消せるかもしれないって思った・・・」
「腫瘍がどんなに小さくなっても、これでは必ず悪化してしまう・・」

それから3ヶ月後、肝転移の悪化が酷くなり更に2ヶ月後に亡くなった。
私が怒っていたあの日は元気だったのに、僅か5ヶ月後に帰らぬ人になった。
それでも、多発肝転移は余命6ヶ月が普通だから骨転移と多発肝転移の再発癌が3年近く持ったのは凄い事だと今でも思う。

抗癌剤を使うことは正解。
だが、使いすぎには反対。

この難しい匙加減が自分では出来ないもどかしさといっも戦っている。

TOPへ